おさらいですが、米トレーサビリティにより流通経路は「未検査米」であっても辿れることがわかりました。
さて「
この検査(品位等検査)の証明を得て、初めて具体的な「産地」「品種」「産年」が表示できるのです。
品位等検査は簡単に言えば玄米の出来をみて「1等」「2等」「3等」と等級付けをすることです。
このルールがJAS法に基づく「玄米及び精米品質表示基準」(管轄:消費者庁)というものです。
要するに一般消費者への玄米や精米したお米の販売についての決まり事です。
消費者に対して、「産地や品質に関する情報を表示してください」、「その表示方法はこうですよ」ということですね。
表示項目は全部で5つ。
「未検査米」は「原料玄米」欄に表示されます。ここの欄には「産地」「品種」「産年」「使用割合」を表示します。袋詰したお米を消費者に販売するには農産物検査による証明がなければ、「産地」「品種」「産年」は表記できませんよ、と、このルールでは定められているのです。
例えば、「埼玉県で平成28年の10月にコシヒカリという品種のお米を収穫した」とします。この収穫したお米を精米し、10kg商品として袋詰めして一般消費者に販売する場合、どのように表示されるのでしょうか。
図で説明したいと思います。
表記Aは農産物検査を受けた場合を示します。「産地」「品種」「産年」そのまま記載しています。
「単一原料米」とは1種類のお米、この例でいえば「コシヒカリ」1種類でブレンドはしていない、ということです。
未検査の場合はどうでしょうか。表記Bを見てみましょう。 「産地」「品種」「産年」は表記していません。しかも「複数原料米」となっていることにお気づきでしょうか?本来は混じりっけなしの100%同一米であったとしても検査をしていないがために「単一原料米」という1種類の原料米とは認められないのです。「複数原料米」という「2種類以上の原料をブレンドしています」というような表記になってしまいます。「産地」については米トレーサビリティによって産地表示は義務付けられていますので表記は可能ですが、「産地未検査」を表示しなければなりません。また、「産年」に関しては、検査しない場合は未表示(空欄)となります。「検査」を受けていない以上、証明ができないというわけです。
「味」は未検査米も検査米も差はないといえます。
しかし、一般的に顔の見えない当事者であるよりも信頼のおける第三者から「証明」を受ける方が安心感はあるでしょう。
また、生産者が親族友人、知り合いなどわりと近い存在であればその必要はないかもしれません。
そういった意味では食の安全を守るための仕組みは重要といえるでしょう。(もちろん完璧はないので、見直しなど調整をしていくことが重要です)
この検査は生産者の任意です。冒頭でも申し上げましたが、現在の米流通は原則、自由となっています。法律の範囲内であれば流通は自由なのです。
生産者である農家がお米を従来のように出荷しても売値は安く、優劣がつくとすればお米に限った話ではありませんが名の知れた地域であれば価値は上がるかもしれません。
だからといって馴染みのない業者に売れば安く買いたたかれるかもしれない。ならば独自で販売となると生産面の経営資源を割いて販売に向けて様々な経費をかけ、時間・労力・資金もどんどん嵩む。先細り高齢化していく中、何もしなければ機械の老朽化など設備への不安が付きまとう。まさに「板挟み」状態にあるといえます。
自由化だから国も検査を強制はしません。しかし最低限のルールは当然ですが決めます。
「農家は甘やかされている」「知恵が足りない」「力のないところは淘汰されて当たり前」「大規模農場に収斂されるべき」や、「米がないなら小麦があるじゃないか」「国内にこだわらなくても海外から輸入すればいいじゃないか」「もうそんな時代じゃない」「自己責任」と、長年いわれ続けてきました。
儲からない農業はなくすべきなのか。自給できなくとも食料は海外から補えばいいのか。
何か大きなショックがないと変われないのか(そして極端な方向へ舵を切る)。
「未検査米」を通して日本の農業の現状が少しだけ見えた気がします。
ここでお伝えしたいのは「未検査米」を通して日本の農業の在り方にご関心をお持ちいただくことが大切だと考えています。